臨床検査の信頼度を評価するのに、感度と特異度があります.特定の病気に罹患している集団に対して検査を行ったとき、陽性(異常値)を示す割合(真の陽性率)が感度です.逆に、特定の病気に罹患していない集団に対して検査を行ったとき、陰性(正常値)を示す割合(真の陰性率)が特異度です.検査の感度を上げようとすれば特異度は下がり(偽陽性が増える)、特異度を上げようとすれば感度が下がる(偽陰性が増える)というジレンマは付き物です.
ところで、
同じ検査でも対象集団の条件によって的中する確率に差がでます.たとえば、感 度 99%、特異度 99%(=偽陽性率 1%)の検査を、有病率
10%のA・地域と、有病率 1%のB・地域で行った場合、真に陽性である確率(陽性的中度, Positive predictive value : PPV)はどのくらい違いがあるのでしょうか?*
同じ検査でも、検査対象の条件によって、的中する確率が2倍も違うという結果です.
関節リウマチは、発病初期の診断が困難なことも多いため診断基準**が作られています.その中に、リウマトイド因子・陽性という項目もあります.いくつかの検査方法(リウマチ
・テスト)があり、関節リウマチの
75〜90%位に検出されます.健康人の 2〜5%位でも陽性になり
ます.高齢者の陽性率はもっと高く、75歳以上では 5〜25%位が陽性になるといわれています.SLEやシェーグレン症候群など他の膠原病、結核の既往、慢性肝炎等多くの疾患でも陽性率が高く、この検査結果だけから関節リウマチの診断は出来ません.
リウマチ・テストの感 度を 80%、特異度を 98%と仮定して同じ試算をしてみました.関節リウマチの有病率を約 1%***と考えても、陽性的中度は 28.8%# にしかなりません.すなわち、人間ドックで無作為にリウマチ
・テストを行い、たとえ反応が陽性に出ても 2/3以上は”ハズレ”です.一方、
患者さんの訴えや症状、とりわけ特徴的な関節所見などから関節リウマチが少なくとも 50%以上の確率で疑われる場合、陽性の結果であれば95%以上の確率で診断が確定できると考えられます.
検診やドックの結果に表示される、C,D等のグレードのように、単純で機械的に
病気の診断がされることはないでしょう.近年、簡便な検査キットや有効性の高い抗ウイルス剤が開発されたので、毎年冬に流行するインフルエンザ診療の質も格段に向上しました.その検査キットでも、夏と冬では的中度が 3倍位違うことが試算できます****.病歴や臨床症状など充分な情報を得た上で検査項目を選択し、総合的に結果を評価しないと大きな間違いを起こしかねません.日々の診療にあたり、こうした点にも注意するように心がけています.