以前から、痛み止めの薬(消炎鎮痛・解熱剤・抗炎症剤)によって胃粘膜傷害(胃潰瘍等)が引き起こされることはよく知られていました.昔は、アスピリン潰瘍と言われるくらいしばしば胃腸を悪くする患者さんを見かけたものです.数年前には、ピロキシカムという鎮痛剤による胃潰瘍の合併で死者が出たことがイギリスで問題になったのをご記憶の方も多いと思います.
風邪薬の中に入っている解熱剤、歯痛止めや頭痛薬、生理痛の薬、関節や筋肉の痛み止め等は全部同じ仲間の薬です.従って、腰痛のために病院で痛み止めの薬をもらって飲んでいる人が、風邪で熱が出てきたからと言って風邪薬を飲むと、この解熱鎮痛剤が重複することになり胃を悪くする恐れがあります.
胃の粘膜では、プロスタグランディン(PG-I2)という胃の粘膜を保護する物質が作られています.一方、痛みのある場所では、
別の種類のプロスタグランディン(PG-E2等)が炎症の原因となっています.鎮痛剤は、この痛みの原因物質であるPGの生成を抑える働きにより、炎症(痛み、腫れ、熱)を軽くするわけですが、胃を守るPGも同時に減らしてしまうために胃粘膜障害が起こってしまうのです.
最近では、胃腸傷害の合併を減らす努力、工夫もいろいろとされるようになりました.プロドラッグといって血液中に吸収されてから有効な成分に変化するような薬が開発されたり、座薬や軟膏、貼り薬の形で直接胃の粘膜を刺激しない経路で薬を吸収させる方法もあります.
薬を使う量を細かく調節したり、胃の粘膜を保護する薬を一緒に投与するなど、薬の使い方にも工夫がされるようになりました.
炎症部位で悪さをしているPGの方を
より選択的に抑える 薬剤(COX2阻害剤,
ハイペン
モービック等)
の開発もされています.ところが、COX2阻害薬の中には、心筋梗塞などを起こしやすくすることもあるという報告もあります(ロフェコキシブ、セレコキシブ).
鎮痛剤による胃潰瘍の特徴は、多発性、難治性で自覚症状に乏しいとされています.頭痛薬や風邪薬を常用したり、連用するのは危険です.信頼おける医者の指示を受け、正しく薬を使いましょう.やむを得ず鎮痛剤を連用している人は、胃の薬を併用したり、定期的に内視鏡検査を受け、胃腸障害に注意して服用することをおすすめします.