近年、医療施設間の連携が一層重要視されるようになりました.急性期と慢性期の治療、療養と介護や在宅医療の区分等による医療の機能分化、IT化による患者データーの共有等の効率化が求められていることからも理解できます.ここでは、リウマチの患者さんにとっての病診連携について、開業医の立場から考えてみました.
参加する医療
最近は、「患者さんが参加する医療、選べる医療」へと変わりつつあります.以前から、主治医による診断や治療の説明に加えて、別の医者の意見も聞きながら、納得して治療を受けたいという患者さんの強い要望がありました.診断に迷うケースや治療法の選択あるいは手術適応などについて、別の医者に意見を求めることを、主治医の方から患者さんに提案することもあります.このような「別の医者の意見」を、セカンド・オピニオンと言います.いろいろな意見を参考にして、患者さんが自ら積極的に治療に取り組む姿勢はいつも大切です. 主治医は、抗リウマチ薬等の副作用に細心の注意を払いながら、薬を上手く使い分けて病気の進行を抑える努力をしています.しかし、関節の破壊がある程度以上進展すると、日常生活に支障を来すようになります.失われた機能を取り戻すためには、手術療法が必要となる方もいます.手術を受けると、どれくらい生活のしやすさが改善されるのか、取り戻すことが出来る機能や実現が難しい手術等についての詳しい情報を示してくれるのは、手術を実際に行う整形外科医です.機能障害の程度には個人差もあり、生活環境や仕事の事情等もそれぞれ違いますから、手術の適応を一概に決めることはできません.自分の状態を直接診てもらい、詳細な説明を受け、納得した上で手術療法に取り組むことで、生活の質(QOL)がより一層向上するのを望めると思われます.ただし、手術療法は機能回復を目的としたもので、根治的治療ではないことを充分に理解しておくことが必要です.
入院や詳しい検査が必要な時
現在処方されている抗リウマチ薬がよく効いていても、副作用の危険を無視することはできません.他の薬剤に比べると、抗リウマチ薬は重い副作用の発現頻度が高いともいわれます.たとえば、代表的な抗リウマチ薬のメトトレキサート(リウマトレックス)は、極めて有効な薬剤のひとつですが、間質性肺炎という重い副作用の併発に注意が必要です.間質性肺炎は、薬剤の副作用だけではなく、関節リウマチの臓器病変として合併することもあります.抗リウマチ薬では、血液の障害、肝臓や腎臓の障害等も起きることがあります.少しでも副作用などの徴候が現れたら的確に対処するよう、主治医はいつも注意しています.リウマチの臓器病変が悪化した時や薬剤の副作用が強い時には、リウマチの専門医、血液、呼吸器、肝臓、腎臓等の各専門医、皮膚科医や整形外科医などが常時勤務する施設で、詳しい検査や入院治療を受けなければならないこともあります.設備が充分に整った施設で、各科の専門医達が直ちに対処してくれるような体制作りがされていることは、患者さんにとっても、日頃リウマチの患者さんと接している主治医にとっても極めて心強いものです.
新しい治療薬
レフルノミド(アラバ錠)や、生物製剤とも呼ばれる抗サイトカイン治療薬(レミケード注射)など、極めて高価な抗リウマチ薬が相次いで発売されました.とりわけ生物製剤は、これまでの薬剤とは全く違う働きで、その効き目は極めて高く、リウマチ治療の概念を大きく変える可能性もあるようです.しかし、過敏症、重い感染症、悪性腫瘍、神経障害等の誘発、心不全の悪化、治療の中断による跳ね返り現象など重大な副作用の報告もあります.従って、現時点では特定の施設でしか処方することができません.長期にわたる使用経験も少ないため、長年使用した後の評価も充分ではありません.現在のところ、定期的かつ長期にわたって注射を続けることが、病気の活動性を抑える上で必要と考えられています.他の生物製剤で、自己注射を許されている国もありますが、我が国で実現する可能性は低いでしょう.比較的重い副作用が起こりやすいと考えられている治療開始直後は、入院が可能な施設で慎重に経過をみながら投与を行い、一定期間が過ぎて安定した状態になったら、近くの専門医でも注射を続けられるようになることが、もっとも現実的で安全な投与方法のように予想されます.数千例にもおよぶ全例調査の結果から、適切な投与方法や副作用などがさらに詳しく解明された後、近くの主治医からも処方できるようになることが、早期に実現するよう望まれます.
恩師の塩川優一教授が、「リウマチの患者さんは通院で治療するのが原則ですよ」と、回診の際しばしば説明されていたことを思い出します.入院して安静にすることは、痛みを軽減するのを容易にするでしょうが、そのために、筋力低下や関節可動域制限を悪化させ、日常生活動作(ADL)が低下するという新たな問題点を作ってしまう恐れもあるからです.主治医と緊密な関係を保ちながら、根気よく治療を続けることが大切だと考えられます.
